絵の雰囲気が好きで、大人になってから買った本。 絵本が大人も楽しむ本として流行りだした1980年頃。それまで 【絵本】というと、小さな頃に出会った岩波こどもの本 シリーズの中の何冊か。絵が中心の本はそれほど体験していなかったように思います。(『ね、おはなしよんで』で出会ったいわさきちひろさんたちの素敵な絵も、【挿絵】の扱いだった) 1979年から東京で生活。その頃よく耳にしたので 気になっていた東京・青山の 『クレヨンハウス』。 本のセレクトや展示の仕方はもちろん、お店全体の子どもにやさしい雰囲気が好きで 時々遊びに行くようになりました。 『クレヨンハウス』 には たくさんの絵本が置いてあります。 その頃ジュブナイル(ヤングアダルトという言葉をジャンルとして耳にするようになっていた)を探しに行っていたのだけれど、色々な子どもの絵本をながめ、手にとってパラパラしているうちに 絵本ってなんだか楽しいし、癒されるなぁと、自分のために買うようになりました。その、記念すべき第1作目。 『ちいさいおうち』 は 書評などで取り上げられていたので 気になっていた絵本。 (子どもの頃に家にあった『岩波こどもの本シリーズ』 の中には この本は入っていなかったように思います) 手にとって中を見る。文章の部分が思ったよりも長い。しかも、ことばのリズムがあまりよくなかったので とても読みづらい。すらすら読み進めない。
私は絵本の言葉は、リズムよく 簡単でわかりやすい しかも言葉の力を感じるものでないと 絵の作り出す雰囲気を壊すと感じるので、 正直、どうしようかなぁと思いました。
気を取り直して、同じコーナーにあった輸入版を見ると、絵がすごく素敵! 文章を読まなくても、絵だけパラパラめくるだけで なんだかシアワセな気持ちになる。 絵が お話を始める…そんな絵本だ! と思いました。 当時の懐具合で、とりあえず日本版を。 そしてやっぱりどうしても欲しくなって その後 輸入版も買いました。 (当時買った翻訳版をみると、1981年発行の第25刷です。絵の色が輸入版に比べてぼやけたような、淡い色に印刷されています。翻訳版と輸入版は、絵の色がかなり違っていて、今見比べてもずいぶん差を感じます。 今売られている翻訳版は、輸入版と見比べても色がほとんど同じです。だから、絵の雰囲気の違いはないと思います。 原画をみたことがないのですが、一度原画を見てみたいですね)
簡単とはいえ、文章の長い本なので、英語で無理なくすらすら理解するには少し苦しい。ただ、翻訳に目を通してから英語にあたると、英語の方が記述がアッサリしているように感じるので私は好きです。 たとえば… ≪ちいさいおうちは まちは いやだと おもいました。 そして よるには、いなかのことを ゆめにみました。いなかでは、ひなぎくの はなや りんごの木が、月のひかりのなかで おどっていました。ちいさいおうちは、しょんぼり しました (石井桃子訳1981年第25刷改版発行)≫ ≪She didn't like living in the city. At the night she used to dream of the country and the field of daisies and the apple trees dancing in the moonlight. The Little House was very sad and lonely.≫ 注:これはちいさいおうちの周囲に背の高いビルがたってしまってからの夜のシーンで出て来る詞ですが、翻訳本では左のページにかかれているこれらの文章、実は輸入版では後半The Little Houseからは右ページで、ビルの谷間にちいさく描かれたちいさいおうちの影の部分にはめこまれています。日本語は字幅があるので、スペースの関係でこのような配置になったのだとは思いますが、絵本としては輸入版で受ける雰囲気とぜんぜん変わってしまいます。(今の版でどうなっているのか未確認なのでわかりませんが) 私にとってはこのような配置の違いは絵本のつくりとして受け入れられない部分なので、最初に翻訳本を読んだ時読みにくいと感じたところにつながっているかもしれません。*1 翻訳のものの微妙さは、小説などでも感じることですが、絵本のような素材(絵、言葉)そのままのよさで勝負するような作品は 翻訳するのも本当に難しいのでしょうね。 翻訳物の難しさと共に、外国の絵本の素晴らしさも強く感じた出会いでした。 このあと、積極的に絵本のコーナーを訪れるようになりました。
今は普通の書店でも輸入版を手に入れることが出来るし、ネットで購入すれば、あっという間に自宅に届く時代になりました。
でも、やっぱり絵本はしっかり手にとって選びたい。
そんな思いを強くしたのも、『クレヨンハウス』のように 輸入版も豊富に取り揃え、翻訳版と並べて陳列してくれているような、素晴らしい心づかいのある子どもの本のための本屋さんで たくさんの本に出会えたからこそだと思います。
手軽に輸入版が手に入るようになった、とはいっても、やはりいまでも輸入版は割高なので、そう気軽には買えません。 でも、できるなら輸入版が入っている本屋さんなら、翻訳本と読み比べて、値段も内容も 納得して買っていくのはいかがでしょう。 特に気に入った本、気になる本は、大事な記念日に買う。 そんな楽しみを持つのも 素敵かもしれませんね。
私は 今年のクリスマスの自分へのプレゼントに 『あの本を買おう』 と 密かに楽しみにしています。 『あの本』 ? それは ないしょ。 (*^。^*) *1 この点について。 先日、書店で確認したところ、大型版では、輸入版と同じレイアウトになっていました。 それだけでも とてもストーリーが読みやすく、スムースな視線移動になりました。 →【追記】へ |